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2015年06月29日

忘れられない、1人の生徒。どうしても忘れられない、ある生徒がいます。彼は、勉強よりも友達とのおしゃべりに夢中で、なかなか勉強への集中力が続かないタイプでした。医者の息子で九州からはるばる勉強するために出てきた子です。

マイペースで進行させて、叱るよりほめる、ほめてから叱るのが我が学院の雰囲気。彼は「褒めると照れる、叱ると逃げる」ことの繰り返しで、憎めないけど不安要素を抱えた子でした。

芯があるのかないのかも掴めないタイプ。1年勉強をして、偏差値50を超えるのは理科だけ。大好きな理科しかやらない子でした。

そんなある日、彼は塾を3日間休みました。「風邪で休む」とメールは届いていたのですが、日頃の様子から察すると「さぼりだな」程度に捉えていました。それでも念の為事務長に彼の所へ電話をかけてもらったのです。ところが電話が繋がりません。妙な胸騒ぎを覚え、心配して下宿先まで見に行くことにしました。

下宿先に到着すると、彼が布団の中で高熱にうなされています。直ぐに病院へ連れて行き。しばらく様子を見ました。数日後、熱が引かず検査。原因不明のまま再検査。そしてまた精密検査。

それから2年です。2年も彼に会うことができなくなるとは思ってもみませんでした。

生死をさまよう病床で「やっぱり、医者になりたい」と言った。
-白血病-

彼のお母さまから。「もしかすると、骨髄・リンパの両方で遺伝子異常があることが原因かもしれません」と。あまりにのことに涙も出ませんでした。その後2年間の危篤状態が3回。放射線も浴び続け、頭にはカツラ、皮膚は1ヶ所ケロイド状態になってしまい、昔の面影はすっかり消えていきました。

19歳で死への恐怖と戦う彼を不憫に思うことが、正しいのかすらわからなくなりました。お母さまから「生存率は1%かも」と伺った時、私自身も心のどこかで覚悟を決めていました。

ただ、そんな彼は、危篤から意識を取り戻した時に「医者になるための勉強がしたい」と参考書を要求してきたのです。人生の儚さや、ぶつけようのない悲しみで一杯になり、泣きながらお酒を飲みました。

私には、ひたすら神様に祈ることしかできなかったのです。「命だけは取らないでください。医師になりたいと努力する子供です。どうか命だけは」と。

そして奇跡が起こったのです。奇跡の寛解(かんかい)。家族の祈りが神様に届いたのもあるでしょう。彼の病気には、アメリカで開発された新薬が功を奏したそうです。その薬がなければ、間違いなく助からなかった。医学の進歩に彼は救われたのです。

闘病で丸2年間ブランクの末、彼は晴れて復帰。外出が許されるようになると必死で勉強に励みました。復帰後、最初は勉強してくれるだけでいいと暖かく見守っていたお母さまも、1年経つと「今年で受験は終わり」と、現実的な方針をたてました。

頑張れと言ったものの、そう簡単に医学部が合格させてくれるわけがないと半ば望みを捨てていました。元気に生きてくれているだけで良いと思ったのです。ところが、そんな母親の想いとは裏腹に、彼は1次試験だけ合格したのです。ただ、容姿があらわになるとその後の面談試験では、病気のことを隠すわけにはいきません。彼はすべてを面談で話してくると決心して、胸を張って2次面接に向かったのです。

君たちが医学部に合格する可能性は、彼の生存率より高いんだ。
-奇跡の合格-

今、彼は九州の市立大学に通っています。体調が優れなかったり、網膜剥離と戦ったりする日常は、決して順風満帆な医学生とは言えないかもしれません。しかし、粋な医大があるもんだと今も思います。文字通り、命がけで頑張ったご褒美でしょう。そして、気力が戻り元気さえあれば2年間のブランクがあっても合格するということを教わりました。

「病を克服して、本当に人生の目標が見えた。そして、時間には限りがあることを見を持って知ることで、効率良く努力することを学んだ」と本人は言っています。「医者になりたい」と覚悟を決め、1年間効率良く努力することを学んだ」と本人は言っています。

「医者になりたい」と覚悟を決め、1年間効率良く無駄のない生活を送ることで、気持ちと生活のあり方が変わったのです。私は、受験準備期間中に不安になる生徒たちに、いつも彼の話をします。

「君たちが合格する可能性は、彼の生存率よりずっと高い。1%って、すごく不安だと思わないかい」と。
この一連の経験こそが、子供たちに医者になって欲しいと願う気持ちをより強くしました。そして、今まで以上に医者の仕事を心から尊敬して、生徒を日夜、褒めて叱って、また褒めて頑張っています。

「医者になるほか、道はなし」。そんな気持ちで、一所懸命頑張っている生徒たちと日々接しています。

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